メタボリックシンドローム(通称メタボ)に着眼した生活習慣病予防のための新たな健診、保健指導が、平成20年4月から実施されます。ウエストサイズが85㎝(女性は90㎝)以上の場合に「要注意」、さらに血糖値、血圧、血中脂質で異常のあった場合にメタボと診断され、保険指導の対象となります。 
 脳卒中や心筋梗塞などの生活習慣病は、このメタボの場合に引き起こされることが多いのですが、原因となる高血糖、高血圧などの症状の一つ一つを、薬剤などにより抑えても根本的な改善にはなりません。運動習慣の徹底、食生活の改善、禁煙などの生活習慣の改善による内臓脂肪の減少が重要であるといえます。今後これらの生活習慣の改善指導が企業の健保組合などに義務づけられるそうです。

 無駄な経費や過度の設備投資を抑えること、人間の体に例えるならば、ぜい肉の少ない引き締まった肉体を持つことは、健全経営の重要な要素とされています。京セラ創業者の稲盛和夫氏は著書「実学」において「筋肉質の経営に徹すべし」とし、これは氏の会計学のバックボーンになっているそうです。
 設備は中古品で我慢する。売れる見込みの少ない棚卸資産は早急に処分する。減価償却費、人件費などの固定費の増加を警戒する。財テクはしないなど、いずれも健全経営のための基本的な原則といえますが、これら以外に興味深い原則があります。
 それは「当座買いの原則」です。原材料は安いときにまとめて大量に買う。この当たり前のことをせず、当面必要な量しか買わないという原則です。人は工具や材料などがたくさんあれば、つい乱暴に使用したり、必要量以上に使ったりしてしまう。当面必要な量だけしかなければ、大切にまた必要なだけ使用するはずである。余分がないから倉庫(代)がいらない。在庫管理も必要ない。高く買ったように思われるが、これらのコストを通算すればどうなるか。この当座買いの原則は、創業以来今日まで受け継がれ、今では京セラの企業習慣となっているようです。
 
 なぜ男性の基準は女性より厳しいのか、なぜ85㎝なのかなど、診断基準については多くの異論があります。個人の身長や体質は同じではありませんから、「サイズオーバー=要注意」とは言い切れません。また生活習慣に多少の乱れがあったからといって即メタボになるとも限りません。しかし、なんとなく体調が思わしくないと感じたときに、食生活を良くしたりタバコを少し控えたりしたことにより、以前より体調が良くなったと感じた経験がある人は結構いるのではないでしょうか。企業がメタボかどうかの診断はとても難しいのですが、今日活気があり、利益が出る企業は一様に筋肉質であり、そして企業習慣はとても健全であります。

2007.11.01
moritax.com-editor 税務コラム